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夢日記 第66夜「甘い味の硝子玉」

夢日記「Dream Diary」
06 /30 2017

こんにちは、ぽち猫です。
“今年”がもう半分、終わってしまうだなんて…(一年が早い…)。

「夢日記アプリ」に投稿中の“夢”の物語です。




黄色い合羽に身を包んだ少女が立っていた。
赤い小さな傘を握りしめ、不安そうな表情で柱に背を預けている。

――其処は、地下鉄の改札口だった。

普段はあまり人通りが多い駅ではないのだが…。
“この時期”になると、利用者が一気に増える。

…ここが、空港に一番近い駅だからだ。

クマのぬいぐるみを抱きしめていた小さな少年は、人込みの中で一際目立つシルクハットを見付けて駆け寄った。
ゆったりと微笑むドレス姿の女性と、少年を高々と抱き上げる男性は肩を寄せ合い帰って行く。

周りでは似たような光景がいくつも繰り広げられ、豪華な衣装に身を包んだ彼らは笑顔で駅を後にしていく。

不安そうな表情で佇む人間は、柱の前に取り残された少女…ただ一人だけだった。


――


彼女はとても有能だった。

幼い時から難しい本を読み漁り、大人たちが解けなかった数々の難題をいとも簡単に答えてみせた。
少しの情報から本質を見抜き、彼女が言葉を発すれば凡人のあらゆる悩みが解決された。

頭脳だけでなく、身体面でも優れた彼女は数多の記録を塗り替えもした。
見目も良く、彼女が微笑めば性別を問わずに人々を魅了した。

――しかし、そんな彼女にも理解できない“悩み”があった。

「どうすれば、あなたにも理解してもらえるのかしら?」

彼女は透き通った声で溜め息を吐く。

全てにおいて完璧な彼女が生まれて初めて浮かべたであろう、憔悴しきった顔。
…しかし、それに相対する人間は“困惑”という表情だけを返した。

彼女は非常に優れた“探求者”であった。
それと同時に、心根の優しい“理想”の人間であった。

「こんなにも尊く、美しいものは他に存在しないでしょう?」

彼女の白く美しい指には、美しい“何か”があった。
大きな瓶に詰められた、色とりどりの…“何か”。

無造作に選ばれた“何か”は彼女に選ばれた事が誇らしいのか、蛍光灯の光を吸い込み七色の輝きを放っている。

「どうして、こんなにも素晴らしいものを否定するのかしら?」

悩まし気な表情で対峙する人間の手を掴み、そっと“何か”を握らせる。

――彼女の指が離れた瞬間。

その輝きは失せ、人間の手の平の温もりを受けて…白く濁った。

「ほら、私をよく見ていて?」

彼女が新しく摘まんだ“何か”はキラキラと光を反射し…そして彼女の口に消えた。
コロコロと大きな“何か”を舌先で転がしているのか、彼女の整った頬が不自然に膨らんでいる。

「あぁ…こんなにも“素敵なもの”は存在しないわ。」

彼女の吐き出す息は甘く、彼女自身が浮かべる表情も蕩けるように甘かった。
恍惚の表情で頷く彼女は視線に気付き、満面の笑みを浮かべて…固まった。

…そこには、彼女は生まれて初めて受けたであろう“失望”の表情だけがあった。


――


傍に居た大型犬を引き連れ、少女は地下鉄のホームを降りていく。
長いエスカレーターに乗って、少女は緑豊かな“外”の世界を堪能する。

ホームにはたくさんの人が電車を待っていて、少女と犬は人の流れに逆らうように売店の前へと歩みを進める。

その店は外国のお菓子屋のような内装で、売っている品物の大半も甘い菓子類であった。
店内に漂う香りに少女は酔ったようにふらつくが、美味しそうな菓子に目を奪われる事はなかった。

――やっぱり、私には分からないのかしら?

ぼんやりと棚の上に置かれた棒付きキャンディーを眺めながら、少女は待ち人の女性が焦がれる“何か”を思い出す。

女性は美味しそうに頬張っていた。
モグモグと口を動かしては、幸せそうに微笑んでいた。

そして食べ終われば新しい“何か”に手を伸ばし、時には「口に合わない。」と吐き出す事もあった。

…周りを見れば、誰もが“何か”を口にしている。

甘いものに、苦いもの。
酸っぱいものに、辛いもの。

誰もが幸せそうに、あるいは不幸せそうにしながらも絶賛する“何か”。
自分好みの味を探し、自分好みに味付けしていく…“何か”。

――しかし、少女には分からなかったのだ。

少女の目にも、確かに美しく見えてはいた。
それは少女の大好きな“硝子玉”とよく似ている。

――だから、少女はその“何か”を口に出来ない…。

舐めても味がしないのだ。

ただ固く、噛めば歯が砕けるだけの無機物だから…。
無理に飲み込めば気管を塞がれて、きっと少女は死んでしまうだろう。

少女は“何か”を勧める人々が理解できなかったし、少女の拒絶を人々は理解できなかった。

――“天才”と謳われた女性ですらも、少女の気持ちが理解できなかったのだ…。

少女は付き従う犬の頭を撫でて、思う。

――どうして言葉の通じない相手とは心を通わせられるのに、言葉が通じるはずの存在とは理解し合えないのだろうか…と。

電車が駅に到着した。

赤いヒールを打ち鳴らし、白衣の女性が降りて来た。
少女は満面の笑みを浮かべながら、女性に傘を振って合図する。

大きく開けられた少女の口内に残る歯の数は…たったの五本、だけだった。


ーーここから夢の感想ーー

人々目線では“甘い菓子”、少女目線では“硝子玉”。
“何か”を別の言葉に置き換えると…?



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コメント

非公開コメント

なぞなぞみたいですね!

少女と女性の二人が、お互いに理解し合える日が来ると良いですね…

Re: なぞなぞみたいですね!

こんにちは!
ブログ訪問&コメントありがとうございます!

そうですね、私からの“なぞなぞ”です。
ヒントは「人生で一度きりの…?」に続く言葉…かも、しれません。

女性と少女には仲良く暮らしてもらいたいですよね…。
女性の“飴玉”と少女の“ガラス玉”の先にあるものは“同じ感情”なので、女性が少女の‟歯”の状態に気付く事が出来れば可能性はある…と、信じたいですね。

お優しいコメント、本当にありがとうございました!

ぽち猫

初めまして、ぽち猫です。
猫とカタツムリと同居中の機械音痴です。

主に夢日記、どう森&ポケモン関連のプレイ日記を書いていこうと思っています。
…思っているだけです。
あくまで思っているだけで、予定はいつでも未定です。

ゆったりのんびり、猫のように気ままなブログを目指して頑張ります。